とくしま記念オケ訴訟のご報告と知事の会見への感想です。
私が飯泉嘉門知事を相手取り、とくしま記念オーケストラ演奏会参加のために使った公用車の燃料費と運転手および同行した秘書の人件費の返還を求めた裁判で、6月4日高松高裁は、対象とした21の演奏会のうち、最後の1件について、知事の行為は公務と言えないと認定し、燃料代や人件費の支出は、違法であると判決してくれました。私の一部勝訴です。
内容は、テレビや新聞でも報道されましたが、私自身が、大切だと考えている点について、補足してご報告します。
裁判の最大の争点は、問題とした21の演奏会(市町主催または県と共催)について、知事の参加・鑑賞行為が、公務といえるかどうかでした。
一審の徳島地裁は、県が主催の場合はもとより、市町主催のものについても、県の政策の一環として行われており、知事自らが参加することについては、「観客と同様の条件下で演奏会を体感し、数字や報告書等の記載に表れない情報を得て今後の県政運営における判断材料とするという意義があることは否定しえない」として、私の訴えを棄却しました。ほぼ、県の主張を丸のみし、公務性を認定したのでした。
これにたいし私は控訴審でも、「それはせいぜい出席回数が1、2回の時に妥当するのであって、55回の記念オーケストラの演奏会中52回も出席することについて、県政運営上の必要性はない」と重ねて指摘しました。
加えて控訴審では、「県が主催者でない場合は、知事のイベントへの参加は、主催者である市町にたいする交際儀礼上の必要に基づくものであるから、イベントの中であいさつの場が提供されたり会場で紹介されたりする等の中身がなければ、交際儀礼上の目的は果たせない。しかし実際は、単に一般の観客と同様に客席に座って鑑賞していたにすぎないのであって、公務とはいえない」と主張しました。
これにたいし県は、二審のなかで、「クラシック演奏会では、主催者を含め挨拶が行われることが稀」「通常、演奏会では、連携協力をした市町の首長等に、直接礼を述べるとともに、事業に取り組んだ感想や芸術文化の振興全般について、幅広く意見交換を行っている。また、主催者の依頼に基づき、来賓として出席すること自体が公務である」などと弁明しました。
こうした双方の主張にたいし高松高裁は、まず、二審で県の弁明について、「『通常』とは一般論であり、本件各演奏会に妥当するか明らかでないし、実際に上記のような意見交換をしたなら、立証は容易にできるはずであるのにそうしていないから、被控訴人の主張は採用できない」と一蹴しました。
ちなみに、普通地方公共団体の首長が各種団体主催する会合に列席する行為については、最高裁の平成18年12月1日判決があります。それによると、「住民の福祉の増進という行政の役割を果たすために、相手方との友好、信頼関係の維持増進を図ることを目的にしていると、客観的に見ることができる場合は、具体的な目的をもっていない参加であっても、公務だとみなせる」(私の要約)と判断しています。
高松高裁は、この判決を引用した上で、「観客に挨拶したり、観客と意見交換したり、主催者の首長あるいはその関係者と意見交換したりするのであれば、・・公務ということができる余地もある。しかしながら、来賓として招待されたからといって、挨拶や意見交換などが一切なく、単に演奏会を鑑賞するのみであれば、客観的には観客と変わるところはなく、・・相手方との友好、信頼関係の維持増進を図ることを目的とすると客観的にみることはできず、それだけでは公務と言い難い」と判断しました。
また高松高裁は、県が「観客と同様の条件下で演奏会を体感し、数字や報告書等の記載に表れない情報を得て今後の県政運営における判断材料とする意義がある」としている点についても、そのような目的だけでは公務と言えないと指摘しました。
高松高裁は加えて、「同一のオーケストラの演奏会である以上、そのような必要性が認められるのはせいぜい1、2回の出席のときにすぎず、飯泉知事のように、55回の演奏会中52回も出席しており、しかも本件演奏会21(番目・最後の分)の会場は本件演奏会11(番目)の会場と一部は同一であるというような場合についてまで妥当するものではない」と判断しました。私の主張を採用してくれたのです。
以上のような理由により、高松高裁は、平成29年7月22日に吉野川市鴨島公民館で開催された記念オケ演奏会(21番目)については、知事が公用車を使用し燃料代や運転手、同行秘書の人件費を県に支出させたことを、違法だと判決しました。
一方、ほかの20件(の演奏会参加)については、住民監査請求が可能な期間が過ぎているという理由により、私の請求は棄却されました。請求期間を徒過した「正当な理由」が存在したどうかが、もう一つの裁判の争点でしたが、この点では、私の主張が認められなかったのは残念です。しかし、判決の文面を見れば、これらの20件についても、公務だと認定されたのではなく、それどころか、これらの多くも時効の問題がなければ、違法と判断されたであろうことがわかります。
今回の判決について飯泉知事は、高裁判決翌日6月5日の定例記者会見で、自身の演奏会出席を「公務として重要なものであると認識している」と述べたようです。しかし、判決文をきちんと読んでいただければ、高松高裁が、県主催分も含めて「55回の演奏会中52回も出席」したことについて、必要がなかったと、明確に判断していることがわかります。県側は、裁判の中で、知事が記念オケ演奏会に足しげく通い鑑賞したことについて「県民目線・現場主義を実践する意義深いもの」だなどと強弁しましたが、高裁では通用しませんでした。
私は、それこそ「県民目線」で見れば、知事の記念オケ事業特別扱いは、明白だと思います。私が裁判でも主張したように、その特別扱いが、知事による川岸美奈子氏への特別な優遇と、知事自身のクラシック趣味を背景にしているのは、明らかだと思います。
もう一件、私が知事を相手取り争っている、川岸美奈子氏への非常識なハイヤー代金支払い裁判も、最高裁で審議中です。新ホール優先交渉権者の撤回にしても、徳島市の保育園整備補助金の見直しにしても、知事の内藤市長べったり姿勢は、あきれるほどです。遠藤前市長への対応とは、天と地の差です。お気に入りとそうでない人に対し、これだけ露骨に差をつけ、そのことについて全く悪びれるところもないというのでは、県民全体の代表としての知事の公平性・基本姿勢を問わざるを得ないと思います。