政策資料集へ戻る

政治倫理条例を提案へ
日本共産党県議団は、四人になって得た議案提案権(議員数の十二分の一以上)を行使し、議員倫理条例の提案を行います。二月定例徳島県議会では、議会運営委員会に原案を示しましたが、各会派から、「検討する時間が欲しい」という意見が出されたので、正式提案は6月議会に延期することなりました。県議団のなかで、私が原案の作成をしましたので、その要点と、私なりの考えをご紹介します。
政治倫理条例が必要な理由
徳島県では、元知事汚職事件を期に、大田前知事の下で汚職問題調査団が結成されました。調査団は報告書を、飯泉県政にかわった二〇〇三年七月、県に提出しました。同報告書では、@入札制度改革A県職員への働きかけ記録制度B県職員の公益通報制度(内部告発制度)C職員倫理条例制定が提案されました。その後これらの提案は、(その制度の中身については、どれも「骨抜き」で実効性が疑わしいという厳しい批判があるものの)順次具体化されました。
このうち、職員倫理条例には、知事はじめ副知事や出納長ら特別職も含めて、利害関係者との飲食を届け出制にすることや、利害関係者から金品を受け取ることを禁じることなど、業者との癒着を防ぎ県民に疑惑を持たれないようにするための措置が、盛り込まれました。
しかし、「全体の奉仕者」としての責任を自覚し、特定の者に便宜をはかることがないように、公平・公正な立場を貫かなければいけないのは、議員もまた同じことです。汚職問題調査団も、職員アンケートの意見をふまえ、議員についても、政治倫理条例制定の必要があると指摘していました。
全国の県と比較しても厳格な内容
県レベルで議員の政治倫理条例を制定しているのは、長崎県、奈良県、宮城県、滋賀県です。今回日本共産党徳島県議団が示した案は、各県の条例と比べて、もっとも厳格な内容になっています。特に業者からの寄付の受け取りと議員の関係する企業の県工事等の請負に関しては、法律に矛盾しない範囲で、以下のように制限しています。
批判を受けるような寄付は受けない
条例案の第三条第一項六号では、「議員および議員の資金管理団体(後援団体を含む)は、政治的又は道義的な批判を受けるような政治活動に関する寄付を受けてはならないこと。議員が代表者となっている政党支部についても同様とする。」としています。現在の政治資金規正法でも、企業・団体からの献金を政治家個人やその資金管理団体が受け取ることは禁止されていますが、政党支部への献金は許されます。また、業界の政治団体が政治家の後援会など別の政治団体に献金することも可能です。しかし、どこに出そうと、企業・団体が自らの利益にならない寄付をするでしょうか。実際、日歯連問題では、業界の政治団体が、自民党の政治資金団体を経由してお目当ての政治家に献金する、「迂回献金」が行われたのではないかと指摘されています。企業から政党支部への献金という形で、支部の責任者である政治家に事実上献金する抜け道もあります。そう考えると、企業・団体献金自体を全面禁止するべきです。このように、現行の政治資金規正法が不十分であることをふまえ、「政治的又は道義的な批判を受けるような」献金を一切禁止したのが、この条文です。
配偶者などの名義でも請負自粛
地方自治法九二条には、地方議員はその自治体の請負をする法人の取締役などになれないという兼業禁止規定があります。これは、議員が地位を利用して不正に利益を得ることがないよう予防するものです。しかし、配偶者や同居家族などを法人の代表にすれば、この規定を逃れることができます。そこで、条例案の第四条では、「議員又は議員の配偶者、二親等以内若しくは同居の親族が役員をしている企業および議員が実質的に経営に携わる企業は、県などが行う工事などの請負契約、当該請負契約の下請け工事、業務委託契約及び物品納入契約を自粛するよう努力」するものとし、広く網をかけています。ただ、「自粛」「努力」と表現し、「禁止」としていないのは、法律への抵触を避けるためです。
制度の実効性を保証する住民の調査請求権
条例案には、このほかにも職員採用や昇任に推薦や紹介をしないこと、特定業者を工事などの請負契約で推薦・紹介しないことなど、いくつもの「政治倫理規準」をもうけています。これらの条文全体について、違反を実際にチェックできる仕組みとして、住民による調査請求権を定めているのも大きな特徴です。条例案では、五〇人以上の有権者の連署により請求がされると、議長は「徳島県議会政治倫理審査会」に審査を求めなければなりません。この審査会の構成も、客観性を持たせるために、議会外部の「専門的知識を有する者及び有権者」から選んだ五人に議長が委嘱することにしています。なおかつ審議は原則公開です。先行する他県の条例では、この審査会の設置要件を議員の一定数以上の請求としたり、審査会を議会議員で構成したり、審査を非公開にしたり、しているものがあります。しかし、それでは客観的で公正な審議ができるか疑問が生じると思います。住民の請求により、住民の前で可能な限りオープンに、客観的な第三者の手により審査される仕組みがあってこそ、制度の実効性が担保されるのではないでしょうか。尚、今回の政治倫理条例案では、倫理条例の重要な要素となる「資産公開」については、ふれませんでした。その理由は、私たちの立場からすると全く不十分な中身だとはいえ、徳島県にも、県議会議員の資産公開条例がすでに作られており、その改正を、別途検討することもできるからです。
6月議会で議論へ
六月議会では、他の会派からもいろいろな意見が出てくるかもしれません。道理のある提案であれば、当然積極的に取り入れながら、制度の実効性がきちんと担保されるよう、議論したいと考えています。