2005年6月議会「徳島県議会議員の政治倫理に関する条例の制定について」提案説明(7月8日)
県議会議員 扶川敦
議第七号、「徳島県議会議員の政治倫理に関する条例」案について、提案者を代表して説明をさせていただきます。
ご承知のように、元知事の汚職逮捕を受けた2002年3月の出直し知事選挙で大田県政が発足し、そのもとに設置された汚職問題調査団は、大田県政から飯泉県政へ交代したあとの2003年7月、知事に報告書を提出しました。その報告の中で汚職再発防止のために提言された4つの柱が、入札制度改革、職員倫理条例、公益通報制度、働きかけ記録制度でした。これを受けて徳島県では、知事はじめ特別職も含む職員倫理条例がつくられました。
公務に携わる県職員が、いやしくも「全体の奉仕者」としての責務を忘れ、不正な行為を働くことがないように、民間と比べても、いっそう高い倫理性を持たなければならないのは当然であります。
しかし、地方政治・行政の重要な意思決定にかかわり、一般の人が知りえない情報に接するのは、県議会議員も同じことであります。
「県民の疑惑や不信を招くような行為の防止をはかり、もって公務に対する県民の信頼を確保することを目的とする」倫理条例が、知事ら特別職と県職員だけにあって、県議会議員にない現状は、全くバランスを欠くものであります。
実際、汚職問題調査団も、県職員アンケートのなかで、県議会議員についても倫理条例を制定するよう意見が寄せられたことを踏まえ、「これらの点についても、徳島県において検討されることを希望する」と提言されました。
そこで、今回提案いたしました倫理条例案は、すでに制定されている長崎、滋賀、宮城、奈良、4県の条例および政令市である福岡市などを参考にしながら、倫理規定をはじめ、法律の許す範囲内で、県条例としては、もっとも厳格な中身を持たせるようにしました。
以下特に議論となる若干の点について、本条例案の特徴を申し述べます。
第一に、条例案は、後援会を含む「議員および議員の資金管理団体は、政治的又は道義的批判を受けるような政治活動に関する寄附を受けないこと、議員が代表者となっている政党支部についても同様とする」としています。
刑法上は、職務に関して賄賂を収受した場合、収賄罪で罰せられます。また、斡旋利得処罰法によると、口利きの報酬を受け取った場合に罰せられます。これらは、本人が直接受け取った場合であって、寄附が資金管理団体や政党支部など迂回した場合は、対象となりません。しかし、そうした場合でも、明らかに職務にかかわる働きかけや口利き行為と結びついた報酬を間接的に受け取ったことになるのではないかと、疑問を持たれるような場合がありえます。そうした「政治的道義的に批判」を受けるような寄附は受けないようにしようというのが、条例文の主旨であります。
第二に、県工事等に関する遵守事項であります。
条例案では、「議員又は議員の配偶者、2親等以内若しくは同居の親族が役員をしている企業および議員が実質的に経営に携わる企業は、県等がおこなう工事等の請負契約や下請け契約などを自粛するよう努力する規定を置いています。
言うまでもなく、これは地方自治法で禁じられている兼業禁止規定を一層厳格にしたものであります。地方自治法第92条の2では、「普通地方公共団体の議会の議員は、当該普通地方公共団体に対し請負をする者及びその支配人又は主として同一の行為をする法人の無限責任社員、取締役若しくは監査役若しくはこれらに準ずべき者、支配人及び清算人たることができない。」と定めていますが、これには、親族の請負についての規定がなく、不十分であります。法律との抵触をさけるため、「自粛する」よう努力するという規定にしました。
第三に、本条例案は、住民の請求により政治倫理審査会が設置されること、また、審査会は議会内部におかず、「専門的知識を有する者及び有権者のうちから」議長が委嘱することに、大きな特徴があります。
県民の請求で審査会が置かれる規定は長崎県にあり、議会外の委員を置く規定は、滋賀県にありますが、これらを併せ持つ条例は、県レベルでは、はじめてとなります。
県民の調査請求ができる要件については、あまりに高いハードルをもうけることは、条例の実効性を失わせるおそれがあると考えますが、一方制度の乱用を危惧するおそれもないとはいえないというご指摘もいただきましたので、長崎県の条例並に有権者50分の1以上の者の連署による請求によることといたしました。なお、地方自治法では、住民が条例の制定または改廃の請求ができる要件も、有権者の50分の1以上となっております。
さらに、住民の知る権利を具体化し、審査の客観性を担保するため、審議を原則公開とする条文も盛り込みました。
以上、条例を提案する意味と条例の内容について、簡単ではありますが、提案者として説明をさせていただきました。
本条例を制定することにより、県議会議員として、高い倫理性を確保しようという姿勢を、県民示すことができるものと確信します。議員各位のご賛同をお願いいたします。